こんにちは。ゴフクヤサン・ドットコムの居内です。
AIを使った着物づくりについて、思いがけずいろんな反響をいただくことがありました。
受け取り方も人それぞれだと思いますが、今回は、私たちの考えを少しだけ整理してみました。
ちょっと長くなりますが、お時間のあるときにでも読んでいただけたらうれしいです。
1. この柄って、AIで作ってるんですか?
最近、着物や帯をご紹介していると、
「この柄って、AIで作ったんですか?」
と聞かれることが増えてきました。
AIを使ってデザインしました──そう聞くと、
「手抜きなんじゃないの?」と感じられる方もいるかもしれません。
たしかに、AI作画は“楽をする近道”にもなり得る技術です。
けれど、クオリティの高い商品として世に出すためには、
最終的に人の目と手が欠かせません。
むしろ、AIを使うからこそ、細部における“
人の感覚”の重要性が際立つのだと、私たちは日々実感しています。
私たちは、AIにすべてを任せているわけではありません。
「AIで一歩目を出して、人の手で整える」。
そんな役割分担で制作を進めることで、
時間をかけるべき部分には、しっかりと手間と技術をかけています。
ちなみに、ゴフクヤサンが作成・販売している図案のうち、
AIを使ったものは、実際には全体の約2割未満にとどまっています。
品数が多いため「たくさん取り扱っているように見える」かもしれませんが、
これは1点からでも制作・掲載できる仕組みによるもので、
実際にはごく限られた数量しか生産していません。
(もっと正確に言うと、売れてません。。)
AI生成の図案は、
小ロットでの安定生産に向けた“実験的な取り組み”のひとつ。
成功したり失敗したりしながら、今もちょっとずつ実験中です。
※なお、AIで制作した商品については、
今後、専用のカテゴリに分けるなど、
よりわかりやすいかたちでご案内できるように整えていく予定です。
2. 手で描く、AIでつくる。どちらにも理由がある
「人の手で描かれたデザインの大切さ」よくわかります。
そして、それがどれほどの時間と情熱を要するものか──
日々の現場で、痛いほど実感しています。
デジナとゴフクヤサンには、
現在、社内に正社員デザイナーが4名、
外部の方も含めると10名以上の体制で、日々図案制作に取り組んでいます。
小さな組織ですが、柄を生むことに多くのリソースを注いでいます
(※自社商品のみならず、全国の着物メーカーからの委託制作も多数)。
たとえば、一枚の振袖をデザインする場合。
ひとりのデザイナーが最初から最後まで、構図・配色・モチーフの意味や物語性、
そして全体の空気感や“間”に至るまで、何度も組み直し、描き直し、
納得がいくまで手を動かし続ける──そんな制作が当たり前のように繰り返されています。
一枚の柄に、1ヶ月以上かかることも珍しくありません。
効率とはまったく違う時間の流れの中で、
それでも一歩ずつ、図案はかたちになっていきます。
完成した柄を見ていると、そこには、
時間をかけて向き合った人の“気持ち”が、
ちゃんと残っている気がするのです。
だからこそ、そうした図案を世に出すときには、
販売計画や価格設定も、次につなげるための現実的な設計にしています。
手間ひまをかけて、ようやく形にしたものだからこそ──
きちんと届け、かけた労に見合う形で回収し、また次の制作へとつなげていく。
それが、私たちにとっての本来の仕事であり、商売の中核です。
一方、その対極にあるのが、
AIやパブリックドメイン画像を活用してつくる商品です。
ひらめいたアイデアをすぐに形にできるスピード感。
そのときどきの空気感や流行をとらえて、
すばやく新しい柄を生み出せる柔軟さ。
AIを活用した図案づくりには、
そうした今の時代ならではの特徴があります。
しかも、私たちが取り組んでいるデジタルのテキスタイルプリントは、
もともと“小ロット生産が得意”な技術です。
1枚からでもプリントができ、型を必要としないため、
柄を変えるたびに大きな準備やコストがかかることもありません。
だからこそ、毎回ちがう図案でも、気負わず・スピーディーに試すことができます。
たとえば、「こんな雰囲気の帯がほしい」「このモチーフで作れないかな」といった声にも、
すぐに図案を作って実際の帯のかたちに落とし込んでご提案することが可能です。
こうした柔軟な仕組みは、AIが生み出す多様なデザインとの相性も非常によく、
まさに今の時代にフィットした、現実的で自由なものづくりのスタイルだと感じています。
どちらが正しい、という話ではありません。
描く人の想いが込められた図案にも、
誰にも描けなかった新しい景色を生み出すAIの力にも、
それぞれに向き合い方があると思っています。
何日もかけて丁寧に描かれた一枚も、
わずかな時間で無数の可能性を提示できるAIの出力も──
どちらも、今のものづくりにとって欠かせない大切な表現のひとつです。
3.いろんな価値観
AI作画で手軽にデザインが作れても、
商品として成立させるには、そこから先が本番です。
モニターで見ていた柄を、そのままの印象で布に仕上げる──
それは簡単そうに見えて、実はとても繊細な作業です。
プリントの色合わせや生地との相性、仕上げ工程までを整えたうえで、
実物がまだ手元になくても、すぐに“販売できる状態”に持っていく。
そんな仕組みを、私たちは20年かけて、試行錯誤しながら整えてきました。
だからこそ、今ではAIでつくった図案も、1枚から安定して商品化できます。
多くのデザインを次々に形にできるのは、
企画から販売までを一気通貫でおこなえる体制があるから。
それは単に効率を追った結果ではなく、
「仕組みがあるからこそ挑戦できる、新しい表現のあり方」だと私たちは考えています。
いま私(居内)が、AI作画の商品をたくさん出しているのも、
その仕組みがあるからこそ可能な、“今の時代に向けた新しい提案”です。
私(居内)がやっているAIシリーズ、正直なところ、商品数は多くても……
売れていないものがほとんどです(苦笑)。
でも、それでいいんです。むしろ、それがいい。
デジタルプリントなら、製版はいらない。1枚からでも形にできる。
思いついたその瞬間にデザインを出力し、すぐに世に送り出せる。
このスピードと柔軟さこそ、長く積み重ねてきた仕組みがあってこそ実現できたもの。
だからこそ、AIという新しい表現手段にも、驚くほど自然にフィットしました。
これまで築いてきた体制が、今の挑戦を支えてくれている。
その手応えを、私たちは強く感じています。
もちろん、数はたくさん出しています。
でも、ただ“数を打ちたい”わけではありません。
その中のたった1枚が、誰かの心に刺さるかもしれない。
「これは、自分のためにある」と感じてくれる人が、どこかにいるかもしれない。
そう信じて取り組んでいるからこそ、AIでの試みも意味のあるものになります。
思いがけない反応や、「こんなのを待っていた」という声に出会えることもある。
そうした手応えがあるからこそ、私たちはこの挑戦を続ける価値があると感じています。
AIを活用したものづくりも、ひとつのまっとうな挑戦のかたちだと思います。
4. ものづくりのアプローチはたくさんある
私たちは、時間をかけて丁寧につくる“本気の一点物”も、
ひらめきをそのまま形にした、“直感から生まれた一点物”も、
どちらも同じように大切にしながら、
今の時代に合ったきものを模索し続けています。
「人が描いたか、AIが描いたか」で線を引くことに意味はありません。
それぞれの手法が持つ強みを、その特性に合ったかたちで活かしていくことが、
これからのものづくりに必要だと感じています。
少しずつでも、「今ならでは」の表現をきもののかたちに落とし込んでいく──
そんな思いで、日々の制作に向き合っています。
“売れるために時間をかける”ことと、
“時間をかけずに売れなくてもいいものを出してみる”こと。
そのどちらも、私たち自身がきものを続けていくために、日々選び、積み重ねている方法です。
5. この柄って、AIで作ってるんですか? それより大切なこと。
少し前までは、「これはAIで作った柄です」と、SNSでも毎回記載していました。
けれど最近では、それをあえて書かないことも増えてきました。
※現在も商品詳細ページには、AI生成である旨を明記するよう努めています。
それは、決して「隠したいから」ではありません。
いまや、スマホのカメラ補正も、地図アプリの案内も、文字入力の変換予測も──
気づかないうちに、私たちは日常のなかでAIの技術に触れながら暮らしています。
画像生成も、その延長線上にある道具のひとつ。
気を張って扱うべきものだった時期を少しずつ過ぎて、
“使っているかどうか”よりも、“どう使っているか”のほうが大切になってきたように思います。
たとえば、PhotoshopのAI機能である「生成拡張」や「コンテンツに応じた塗りつぶし」を初めて使ったとき、
あまりにも自然で、便利で、当たり前のように画像の一部が補完されることに驚きました。
それと同時に、「これをAIってわざわざ言う時代でもなくなってきたんだな」と、すとんと腑に落ちた感覚がありました。
そもそも、私たちが日々お客様とやりとりしているSNSだって、
どの投稿が届き、どれが広がるか──その多くはAIのアルゴリズムが決めています。
気づけば、知らないうちに私たちはAIとともに暮らす時代に入り込んでいる。
そんな今、「ここまではOK」「ここからはNG」と、使い方に線を引くことに
どれほど現実味があるのでしょうか。
境界を定めるよりも、その力をどう活かすか。
どんなふうに人の感性と結びつけて、新しい表現にしていけるか。
そこにこそ、今のものづくりの面白さがあると思うのです。
まだ見たことのない柄や、思いがけない出会いが生まれていく感覚。
その一つひとつが、私たちにとっての希望であり、次への原動力です。
だから最近では、「これはAIの柄」「これは人の柄」といった線引きを、あまり重視しなくなりました。
どちらであっても、誰かが「着たい」と思える一枚になっているかどうか。
そのほうが、ずっと本質的な問いだと思うからです。
AIは、感性やセンスの代わりになるものではなくて。
ただ、発想のヒントや、空気感を形にする“きっかけ”としては
すごく頼りになる存在だと思っています。
便利な時代だからこそ、どんな想いで使うのか、どこに手をかけるのか。
その積み重ねが、自然と仕上がりや、着てもらったときの空気にあらわれてくる──
そんなふうに信じながら、日々の制作を続けています。
記事リンク:AIでできること自分用覚書
6. 20年以上前から、プリンターで“きもの”を作っています
20年前、「着物にプリンター?」と、よく驚かれました。
「それって本当に着物なの?」「そんなのは手抜きじゃないの?」「そんな作り方でいいの?」
「伝統を壊してしまうのでは?」「職人さんの仕事がなくなるんじゃないの?」──
そんな声を、面と向かって言われたことも、一方的に書かれたことも、一度や二度ではありません。
技術的な違和感にとどまらず、文化や価値観そのものを否定されるような問いかけも多く、
“着物はこうでなければならない”という空気の中で、肩身の狭さを感じることもありました。
それでも、自分たちなりに考えながら、少しずつ試しながら、できることを積み重ねてきました。
20年後の今では、成人式で着られている振袖の8割以上が、
インクジェットで染められたものになっています。
あの頃、なかなか理解されなかった方法が、いまではごく自然な選択肢になっている。
20年という時間は、時代の価値観すら変えてしまうのだと、改めて感じています。
今、AIを使ったものづくりに対しても、同じような空気を感じることがあります。
「それって本当にいいの?」「そんなのは手抜きじゃないの?」「そんな作り方でいいの?」
「伝統を壊してしまうのでは?」「図案家さんの仕事がなくなるんじゃないの?」
けれど、ふと思うのです。
今から20年後、私たちはこの瞬間をどう振り返るのだろうか、と。
もしかしたら、「最初は賛否があったけど、今では当たり前だよね」と言っているかもしれない。
もしかしたら、「あの頃やってきたことが、いまにつながっている」
と振り返られる日が来るのかもしれません。
いま、私たちが目にしているものごとの“輪郭”は、本当に確かなものなのか。
当たり前と思っていることの中にこそ、見直すべき余白があるのかもしれません。
そんな問いを胸に抱きながら、私は今日も、ものづくりを続けています。
ちなみに、2007年頃の写真が1枚残っています。
プリンターを導入してから商品化できるようになるまで
4年間試行錯誤を繰り返しました

当時はまだ、大阪・船場の小さな店のお座敷に
プリンターを置いて作業していました。
まさに手探りの時代でした。
10年前の取材記事も、あらためて公開しました。
当時の試みが、今につながっているのを感じます。
よろしければこちらもどうぞ。
記事リンク:デジタル着物のこと(2015年)
↓ の記事、プリントの工程を素敵にまとめて頂いてます
KIMONOanne.スタッフ@KIRACO様のnote
2012年ごろからはマッピングシミュレーションシステムを導入し、
実際に布を作らなくても完成イメージを再現できる体制も整えてきました。
これは、試作を効率化し、表現の幅を広げるうえでも大きな助けとなっています。
外部リンク:シマセイキ マッピングシステム

7. AIを使うときに、気をつけたいこと
AIを活用するうえで、私たちがいちばん大切にしたいのは、
「使うか・使わないか」ではなく、「どう使うか」という姿勢です。
社内では以前から、AI画像生成ツールの使用にあたって一定のルールを設けてきましたが、
AI活用がますます進む今だからこそ、あらためてその基準を見直し、整理することにしました。
どんな道具も、使い方しだい。
私たちにとってAIは、“仕事を楽にするもの”ではなく、
“表現の選択肢をひろげるもの”として、丁寧に向き合っていきたいと考えています。
出力された画像についても、公開前には必ず人の目で確認し、
他の作品と偶然似ていないか、問題がないかを一つずつ丁寧に見ていくようにしています。
2025年には「AI推進法」が成立し、生成AIの活用が国の施策としても正式に位置づけられました。
当店もその流れに沿って運用を進めていますが、
法的に問題がないことと、誰かの心にすっと届くことは、また別の話だと感じています。
だからこそ、「説明できる仕事」を意識しています。
「これはどうやって作ったの?」と聞かれたときには、できるかぎり丁寧にお伝えします。
AIは確かに便利なツールです。
でもだからこそ、「何のために使っているのか」「どこに人の意志があるのか」が、
自然と伝わるような使い方を、これからも心がけていきたいと思っています。
とはいえ、これまでに公開してきた商品の中には、
当時の認識が甘かったり、気づかないうちに配慮が足りていなかったケースもあったかもしれません。
そうした点をご指摘いただいた際には、状況に応じて見直しや修正など、できる範囲で誠実に対応いたします。
完璧ではなくても、できるかぎり丁寧に。
そんな姿勢を忘れず、AIとも向き合っていけたらと考えています。
なお、社内ではAI作画ツールの使用に関するガイドラインも作成し、
日々の制作に活かせるよう整備を進めています(※詳細は別ページにまとめています)。
記事リンク:AI作画アプリ使用ガイドライン(社内用)
8. 人とAI、手作業と仕組みの共存
AIを使っていても、私たちの仕事の多くは“アナログ”です。
とくに着物という形に仕立てるためには、柄が体に乗ったときのバランスや、帯との組み合わせ、前身頃と後ろ身頃の柄のつながりまで考慮しなければなりません。
たとえAIで生成された図案であっても、それを“着物にする”ためには、多くの判断と調整が必要なのです。
たくさんの図案を出して、一枚一枚チェックし、気になる箇所を修正しながら、少しずつ再現性を高めていく──
それはむしろ“職人仕事”に近い感覚であり、私たち自身も自分たちを「作品をつくる作家」ではなく、「現場で動き続けるデジタル職人」と感じています。
AIによる“最初のひらめき”を受け取り、人の手で整えて、仕組みで支える。
このバランスが、私たちにとっての「ものづくりのリアル」です。
9. デジタル×伝統──ずっと取り組み続けてきたこと
AIやデジタル技術が注目されるずっと前から、
私たちは「伝統と現代技術をどうつなげるか」をテーマに、試行錯誤を重ねてきました。
着物にかぎらず、文化というものは「古いか新しいか」では語りきれません。
大切なのは、「今の時代に、どうすれば自然に受け入れてもらえるか」。
その問いに向き合いながら、少しずつ取り組みを積み重ねてきました。
このまま何もしなければ、静かに消えていってしまうものもあるかもしれない。
だからこそ、ときには手を加えながらでも、残していける道を探したい。
たとえば、かつて職人の手で行っていた工程を、いまはデジタルで引き継ぐという方法もある。
それは「楽をする」ためではなく、できることを少しでも増やすための選択です。
私たち自身も、まだ答えを探している途中です。
けれど、少しずつでも続けていくことで、次の世代に何かを手渡せるかもしれない。
そんな思いで、これからも、今の時代に合った着物のかたちを探っていきたいと思っています。
● デジタル友禅プロジェクト
東京の友禅作家・ユキヤさんと一緒に取り組んでいる「デジタル友禅プロジェクト」は、手描きとプリント、そのちょうど真ん中を探る試みです。
ユキヤさんが描くのは、一本一本の線に物語が宿る、確かな手の仕事。
その図案を、私たちのプリント技術で丁寧に布へと写し取り、着物や帯として仕上げていく──
このプロセスには、アナログのぬくもりとデジタルの精度、そのどちらもが息づいています。
この取り組みについては、ユキヤさんの公式サイトでも詳しく紹介されています。
外部リンク:デジタル友禅プロジェクト|友禅作家ユキヤ公式サイト
価格も、量産でも一点物でもない、“手の届く特別”を目指しました。
そしてこのプロジェクトのいちばんの特徴は、売上の一部が再びユキヤさんの完全手描き作品の制作費にあてられるという「循環」の仕組みです。
● なくなるはずだったものと、次の誰かをつなぐ
私たちのデジナ新潟工場には、廃業した染工場や縮小した加工場から引き取った、
かつて着物に使われていた数千点以上の図案が保管されています。
ゴフクヤサンtwitterリンク
長いあいだ棚の奥で眠り、やがて捨てられてしまうはずだった図案たち。
けれど私たちはそれらを、職人の手と時代の記憶が宿るかけがえのない意匠
として受け取り、静かに息を吹き返す方法を探してきました。
いま、その一部をスキャンによってデジタル化し、AIを使って再構築・再解釈することで、
現代の布の上にもう一度よみがえらせる取り組みを進めています。
ただ懐かしむだけではなく、未来に活かせるかたちで。
本来、日の目を見なかったはずの意匠に、
次の誰かの暮らしの中で使われる“出番”をもう一度届けたい

──それが、私たちの考える「新しい伝統」のひとつです。
こうした積み重ねの中から、少しずつ形になってきたことがあります。
それは、最新の技術を使いながらも、過去の美意識をちゃんと受け継ぎ、
次の時代に手渡していくという試みです。
AIやデジタルプリントといった新しい道具が活躍する場面が増えてきました。
でも私たちがいちばん大切にしているのは、そこに込められた想いや背景を、
ちゃんと感じ取って、つなげていけるかどうかということ。
伝統を「守る」よりも、今の言葉や方法で、自然に“つなぎなおす”こと。
その小さな積み重ねが、私たちなりの「新しい伝統」になっていけばいい。
そう思いながら、今日もまた図案と向き合っています。
10. “インスピレーション”が布になる場所
AIを活用した商品開発を進める一方で、私たちはいま、
作家さんや職人さんと共につくるものづくりにも、あらためて力を注ぎはじめています。
「量産か、芸術か」という二択ではなく、
両方が支え合うかたちをどう築いていけるか。
その問いの先に、これからの表現の幅と、作り手の未来があると考えています。
“素の価格”と、“積み重ねの価格”
現在、AIやパブリックドメイン素材をもとに制作した図案の商品は、
基本的にデザインフィーを含まない価格で販売しています。
これは、著作権的に自由に使える素材や自動生成ツールを活用しているからこそ実現できる、
いわば“素の価格”。
まずは形にしてみるための、実験的なラインとして位置づけています。
一方で、作家さんが構想を重ね、時間をかけて生み出した図案には、
その過程や感性に対して正当な対価をきちんと反映させることが、
何よりも大切だと感じています。
“思いつき”ではなく、“積み重ね”から生まれた作品には、
それにふさわしい価格をきちんと乗せて届けたい。
収益が出ることは、作り手が次の表現を続けていくために欠かせない条件のひとつ。
だからこそ、価格設定の段階から、つくる人の未来に寄り添いたいと考えています。
表現を、布にのせるということ
たとえば──
・SNSを中心に活動しているイラストレーターの方
・舞台や映像の衣装制作に関わるデザイナーの方
・伝統と現代表現を掛け合わせたいと考えている作家の方
こうしたクリエイターの方々と連携しながら、
「表現を、布というかたちに変えて届ける」ための仕組みを
これから整えていきたいと考えています。
単なる委託制作や請負ではなく、
“共につくり、共に受け取る”仕組みを、一緒に育てていく。
それが、これからの表現者にとっての、もうひとつの選択肢になればと願っています。
好きなことで、ちゃんと稼ぐしくみを
どんなに素晴らしい表現でも、続けていくためには、
無理のない収益構造が必要です。
私たちは、クリエイターの「好き」が続いていくために、
ちゃんと稼げる仕組みをつくりたい。
感性と技術。アナログとデジタル。即興と積み重ね。
そのどれか一方ではなく、いまある手段をうまく掛け合わせて、
表現がちゃんと届き、報われる流れをつくること。
その先に、「つくる人が食べていける」という、
あたりまえの未来があるはずです。
「この世界観を布にしたい」
「自分の表現を、かたちとして残したい」
そんな想いがあれば、ぜひ気軽にお声がけください。
私たちは、自社工場を持つ“現場の人間”として、
その想いをかたちにする準備ができています。
──この話は、きっとまだ始まったばかりです。
続きはまた、近いうちに。
11. 試しながら整えていく日々の姿勢
AIで柄をつくるようになってから、何千枚、何万枚という布を試作・検証してきました。
けれどそのどれも、「これで完成」と思えたことはほとんどありません。
毎回、素材ごとのクセ、季節による湿度の違い、インクの乗り方……
どれも想像通りにはいかず、微調整の連続です。
そうした“地味な検証”を繰り返して、少しずつ「これならもっと良くなるかも」という感覚を掴んでいく──
それが私たちにとっての「ものづくり」です。
商品として世に出すものは、もちろん確認を重ねて納得できる品質に仕上げています。
でもその裏側には、何度も作り直し、整えてはまた見直すという過程があります。
この“未完成のまま積み上げていく姿勢”こそが、今の私たちにとって自然なスタイルです。
ちなみに──
この文章、ところどころAI(ChatGPT)に相談しながら書いています。
正直に言うと、もともと文章を書くのは本当に苦手です。
Twitterの150文字ですら、書いては消してを何度も繰り返し、
気づけば投稿ボタンを押せずに終わることもよくあります。
でも、どんなに頭の中で考えていても、外に出さなければ誰にも伝わらない。
そして、やってみなければ何も始まらない。
それは、着物づくりでも、文章を書くことでも、同じだと感じています。
今回こうして、日頃心の中にあった想いや考えを、文章としてかたちにできたのは──
AI(ChatGPT)がそばにいてくれたからこそです。
自分では言葉にできなかった感情や論理の断片を、少しずつ引き出してくれて、
「こういう言い方があるよ」とそっと差し出してくれるような存在でした。
でも、書かれた内容そのものは、私自身が見て、感じて、悩みながら積み重ねてきたことです。
AIは、そのアウトプットを後押ししてくれる相棒。
この感覚は、AIで図案をつくるときにも、少し似ている気がします。
“自分の中にあるものを、かたちにする”という最初の一歩を、少し軽くしてくれる存在。
そのうえで、最後の仕上げはやっぱり人間の役割で、そこに込める想いは変わらない。
……とはいえ、今回の文章はちょっと長くて読みづらかったかもしれません(笑)。
AIも私もまだまだ修行中ということで、次はもう少し読みやすくできるように頑張ります。
(がんばれ、AI。君も一緒に成長だぞ。)
そんなふうに、ものづくりも、言葉にすることも、
これからもAIと一緒に、少しずつ育てていけたらと思っています。
まだまだ試行錯誤の途中ですが、
不器用な歩みでも、重ねていけば、ちゃんと道になる。
そう信じて、これからも前に進んでいきます。
12. 作る人と着る人のあいだに
私たちがこの仕事を続けている理由のひとつに、「つくる人と、着る人のあいだに立ちたい」という思いがあります。
作家さんやクリエイターの持つ感性や技術に、もっと光が当たる場所を増やしたい。
実験的な商品や挑戦的な表現にトライできる「場」を少しでも広げたい。
そんな願いがあります。
着物という文化は、誰かが作り、誰かが選び、誰かが着ることで成立するものです。
“つくる人”が減れば、“着てみたい”という気持ちも育ちにくくなる。
逆に、“選べる着物”が増えれば、“つくる人”の居場所も増える──
その循環を信じて、今日も小さな挑戦を重ねています。
私たちのやっていることは、きっと大きな流れの中では、ほんの小さな点にすぎません。
けれど、「こういうのが欲しかった」と言ってくれる人がひとりでもいる限り、
できる限りの方法で、表現に挑戦していきたいと思っています。
たとえ小さな一歩でも、その積み重ねが未来につながっていく。
着物という選択肢が、これからも自然に残っていく世の中になれば──それは本当に嬉しいことです。
とりとめのない長文にもかかわらず、最後まで目を通していただき、本当にありがとうございました。
まだまだ試行錯誤の途中ではありますが、少しでも私たちの取り組みや考え方が伝わっていれば幸いです。
そして最後に、こっそり本音を。
デジナも、ゴフクヤサン・ドットコムも、
毎年毎年の設備投資でいつもカラッカラです(笑)。
皆さまのご注文とご愛顧が、私たちの未来を支えています。
「いいやん」と思ったら、どうぞ遠慮なく!どんどんご利用くださいませ。
テキスタイルプリントはデジナ
オリジナル着物ゴフクヤサン・ドットコム
── 船場の商人(あきんど)より、心からのお願いでした。
有限会社ゴフクヤサンドットコム
代表 居内 久勝